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2013年11月17日日曜日

詞句窯變 ― trans haiku 008 / 風花銀次譯


Nokoru momiji o nugi sutete koso yurugarure

殘る紅葉を脱ぎ捨てゝこそゆるがるれ

2013年9月13日金曜日

小説「身代わり狂騒曲」 10 ‐ 狂乱 / 風花千里

2013年8月19日月曜日

小説「身代わり狂騒曲」 09 ‐ 夢 / 風花千里

2013年7月7日日曜日

短歌&随想「翼擴星」/ 齋藤幹夫

翼擴星 -やほよろづの星々-  齋藤幹夫

昧爽の星天幕のうらがはへ流れ鵲橋の殘像

 渡り鳥にも越冬の爲南方へ渡つて行く夏鳥、越冬の爲に北方から渡つて來る冬鳥とあり、その他に旅鳥・漂鳥・留鳥等、鳥の行動に應じた呼び名がある。本邦で冬鳥の白鳥は、星座の世界においては夏の鳥。銀漢の眞上にその翼を擴げ、尾の部分にあたるデネブは、ヴェガとアルタイルとで夏の大三角を形作る。  神話では說が幾つかあり、そのひとつがゼウスが白鳥に化けたもので、これまた好色漢まるだしの逸話となつてゐる。

2013年6月28日金曜日

小説「身代わり狂騒曲」 08 ‐ 扇屋 / 風花千里

2013年6月18日火曜日

ひとり兎園會 7 「ダイダラボッチ」/ 齋藤幹夫

 ひとり兎園會 ―其之漆 ダイダラボッチ―                 齋藤幹夫

那賀郡なかのこほり平津驛家ひらつのうまや西にし一二をかり。大櫛おほくしふ。上古いにしへ人有ひとあり、體極かたちきはめて長大おほきに、うへりて、はまぐりりてくらふ。くらへるかひりてをかりき。とき人大朽ひとおほくちこころりて、今大櫛いまおほくしをかふ。大人おほひと踐蹟あとどころは、ながさ三十餘步ぶあまり、廣さ二十餘步ぶあまりあり。尿いまりは、二十餘步許ぶあまりばかりあり。                     「常陸風土記」より

2013年6月14日金曜日

俳句十句「有翅卵生」/ 風花銀次

有翅卵生        風花銀次

冷やし瓜なまなかに冷え世紀末
とざいとうざいわが謹製の兒が步く
炎天倶に戴きて父子蒸發す
秋ぞろ〴〵と筋肉から筋肉へ
句碑の句が消えつゝありて良夜かな
なが〳〵と神の留守居の木蔦かな
日出處ひいづるところの寒の烏を見にゆかむ
花の木はまだしづかなり初舞臺
らうたしや夢見月的夢のひと
春陰の卵生の父子わらはざり

2013年5月30日木曜日

小説「身代わり狂騒曲」 07 ‐ 吉原詣 / 風花千里

2013年5月27日月曜日

小説「曼荼羅風」8 -御慶- / 齋藤幹夫

2013年5月25日土曜日

詞句窯變 ― trans haiku 007 / 風花銀次譯


Nyoze nyotai nyonyo to yougan huki idashi

如是女體によによと溶岩噴き出だし

2013年5月22日水曜日

短歌&随想「熊動星」/ 齋藤幹夫

熊動星 -やほよろづの星々-  齋藤幹夫

春雷に刹那けもののにほひして北辰かすかなるゆるぎあり

 人でなし、傍若無人といつた言葉は、
そもそも人であらせられぬところの「神」の爲の言葉と思へるほど、聖書や數多ある神話の神神のやりたい放題加減には呆れるどころか、笑ひたくなるほど。特に希臘神話の全能神ゼウスの好色漢すきをとこ振りは、世の男達からは感嘆の聲が擧がるかも知れぬが、女達からは輕蔑の眼差しを向けられても仕方の無い。  春の代表的な星座の小熊座とその母の大熊座も、このの犧牲者。

2013年4月29日月曜日

短歌&随想「烏磔星」/ 齋藤幹夫

烏磔星 -やほよろづの星々-  齋藤幹夫

櫻散り梢の先にはりつけの闇夜の烏かがやきにけり

 日本神話の八咫烏は神武東征の際に、神武天皇一行を熊野から大和へと道案内をし皇軍を勝利に導いた。その功績は現代に於いても崇められ、八咫烏を祀る八咫烏神社、熊野那智大社、賀茂御祖神社もある。また陸上自衞隊の中央情報隊、中部方面情報隊、そして日本サッカー協會のシンボルマークになつてをり、一九九七年に發見された火星と木星の小惑星には後に八咫烏と命名されるなど、希臘神話の烏とは月と鼈の違ひがある。

2013年4月26日金曜日

小説「身代わり狂騒曲」 06 ‐ 工房 / 風花千里

2013年4月25日木曜日

詞句窯變 ― trans haiku 006 / 風花銀次譯


Yoru nagara hana no yama towa narinikeri

夜ながら花の山とはなりにけり

2013年4月22日月曜日

小説「曼荼羅風」7 -芝浜- / 齋藤幹夫

2013年4月11日木曜日

ひとり兎園會 6 「轆轤首」/ 齋藤幹夫

 ひとり兎園會 ―其之陸 轆轤首―                 齋藤幹夫

七兵衞の家に一婢あり。人ろくろくびなりといへり。家人にその事を問ふに違はず。二三輩と俱に夜その家にいたる。家人かの婢の寢るのを待ちてこれを告ぐ。源藏往きて視るに、婢こゝろよく寢て覺めず。すでに夜半を過ぐれども、未だ異なることなし。やゝありて婢の胸あたりより、僅かに氣をいだすこと、寒晨に現る口氣の如し。須臾しゆゆにしてやゝ盛にの甑煙そうえんの如く、肩より上は見えぬばかりなり。視る者大いに怪しむ。時に桁上の欄閒を見れば、彼の婢の頭欄閒にありて睡る。その狀梟首の如し。視る者驚駭して動くおとにて、婢轉臥すれば、煙氣もまた消え失せ、頭はもとの如く、婢尚よくいねてめず。就て視れども異なる所なしと。源藏虛妄を言ふものにあらず、實談なるべしとなる。                   「甲子夜話」卷之八より

2013年3月30日土曜日

短歌三首「縮緬雜魚」/ 齋藤幹夫

縮緬雜魚          齋藤幹夫


海苔炙るにほひ纏ひてなまよみの甲斐性無しの屈強の彼奴

縮緬裝袖珍本の『戀敵江戸彼岸櫻花辯 仇討の悲願實りて血飛沫の舞ふ』

禁欲の續く眞晝に禁斷の土地に拔かれつぱなしの野蒜
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2013年3月25日月曜日

小説「曼荼羅風」6 -小粒- / 齋藤幹夫

2013年3月22日金曜日

小説「身代わり狂騒曲」 05 ‐ 連 / 風花千里

2013年3月18日月曜日

俳句十句「急於星火」/ 風花銀次

急於星火        風花銀次

星の香のくちひげほしき夜長かな
銀漢に銀のいちもつ田之助忌
紅鶴橫死星使遁走したる後
星のうちの惑星に棲む男女なんによ哉
讀みさしてなべて星讖の書と思ふ
星貨舖に箒が店晒しの刑
星の鬣梳く佯狂の若きかな
らちもなき遊星學や春しぐれ
彗星の背姿うしろつきよき花の上
超音波檢査へを見にゆかな

2013年3月15日金曜日

短歌&随想「角曖星」/ 齋藤幹夫

角曖星 -やほよろづの星々-  齋藤幹夫

生娘きむすめみ桃やくらむをとこなどつのひとつゆいみじきけもの

 魔法や妖精が出て來て、血みどろや殘虐な死の描寫の無く、大人が子供に見せられる物が「ファンタジー」として大衆にも認知されてゐる向きが多いにある。反面「ダーク・ファンタジー」なんて言葉もあつたりで「ファンタジー」といふ物が至極曖昧な定義であるから、私はこの言葉が大嫌ひ。そのファンタジー物の中で、一角獸ユニコ|ンは小説や漫畫、ゲエムの世界の西洋龍ドラゴン天馬ペガサスと竝び重寶され大衆の認知度も高い。

2013年3月6日水曜日

蟲雙紙 025 「拜み蟲は…」/ 風花銀次

 蟲雙紙〈二十五〉      風花銀次

拜み蟲は顔よき。拜み蟲の顔をつとまもらへたるこそ、その祈ることのたふとさもおぼゆれ。ひが目しつるとふと思はるるに、一心にお命頂戴せむとかまへたる。このことは書きとどむべし。すこし年などのよろしきほどは、かやうのことを罪ふかく思はれけめ、今は心いとかろし。

2013年3月4日月曜日

ひとり兎園會 5 「蜘蛛」/ 齋藤幹夫

 ひとり兎園會 ―其之伍 蜘蛛―                 齋藤幹夫

文化元子年、吟味方改役西村鐵四郞、御用有レ之、駿州原宿の本陣に止宿せしが、人少にて廣き家に泊まり、夜中にふと目覺めて、牀の閒の方を見やれば、鏡の小さきごとき光あるもの見えける故、驚きて、(中畧)燈火など附けんと周章せし。右の(その)もの音に、亭主も燈火を持出て、彼の光ものを見しに、一尺あまれるくもにてぞありける。打寄りて打殺し、早々外へ掃出しけるに、程なく湯どのの方にて、恐ろしきもの音せし故、かの處に至り見れば、戸を打倒して、外へ出しやうの樣子にて、貮寸四方程の蜘のからびたるありける。臥所へ出しも湯殿に殘りしも同物ならん。いかなる譯にやと語りぬ。           「耳嚢」巻之五より(文中括弧は引用者)

2013年3月2日土曜日

詞句窯變 ― trans haiku 005 / 風花銀次譯


Haru wa akebono tennyo mizukara obi o toku

春はあけぼの天女みづから帶を解く

2013年3月1日金曜日

短歌&随想「蟹薄星」/ 齋藤幹夫

蟹薄星 -やほよろづの星々-   齋藤幹夫

かの星の 耀 かがやき薄冰うすらひに沿ひひたすらによこばひの蟹

 山陰の日本海で水揚げされる松葉蟹は商標のやうなもので正式和名は楚 蟹ずわいがに。 別の種類で松葉蟹の和名を持つ扇蟹科松葉蟹屬の蟹にとつては遣る瀨無さ一杯であらう。人閒樣にとつては何て呼ばれやうが賣れればいいのだから、そんなことにはとんとお構ひ無し。蟹の氣持なんざ考へてられるか、否、蟹なんぞに氣持を抱く腦味噌なんかあるものか、旨い味噌がたつぷりと詰まつてゐれば、それでいいのだ、と云はむばかり。

2013年2月27日水曜日

蟲雙紙 024 「叩き網は…」/ 風花銀次

 蟲雙紙〈二十四〉      風花銀次

叩き網はのどかにやりたる。はげしきはわろく見ゆ。
捕虫網ははしらせたる。吸蜜中の蝶などを捕らへむに、ふと見やるほどもなくひらめき、そよかぜにふかれたるごとき花ばかりのこりたるこそおかしけれ。はたはたと花散らすはいとわろし。

2013年2月25日月曜日

小説「曼荼羅風」5 -もう半分- / 齋藤幹夫

2013年2月22日金曜日

小説「身代わり狂騒曲」 04 ‐ 重三郎の懸念 / 風花千里

2013年2月20日水曜日

蟲雙紙 023 「こころゆくもの…」/ 風花銀次

 蟲雙紙〈二十三〉      風花銀次

こころゆくもの くはしくかいたる昆蟲圖譜の、蟲に影なかりける。夏山へのゆくさに、さきこぼれて、をのこどもいとおほく、蟲よくとる者の網ふりたる。しろくきよげなる捕蟲網に、いといと小さき蟲をとるべく花をすくへば、花天牛はなかみきり入りたる。花天牛に、すこしまざりたる。ものよくいふ蟲屋ゐて、ひとのとりたる蟲の、種の同定したる。谷におりて飮む水。
つれづれなる折に、いとあまりめづらしうもあらぬ盜蛾とりがの來て、世の中の物がたり、此の頃あることの、をかしきも、にくきも、あやしきも、これかれにかかりて、おぼろ

2013年2月18日月曜日

短歌&随想「船霞星」/ 齋藤幹夫

船霞星 -やほよろづの星々-    齋藤幹夫

神々も挑みたりけむはるかなる沖の霞よ さらば星船

 全天で最も大きい星座は海蛇座。春の代表的な星座で、獅子座の足元にその巨體をうねらせてゐる。頭を地上に見せ始めその全體が天を這ふやうになるまでには凡そ十時閒程掛る。この海蛇座が全天一位を獲得したのは今から三百六十年程前のこと。それまではアルゴ座が全天一位の座に君臨してゐた。その大きさは海蛇座の一・四五倍。  アルゴ座は希臘神話の「アルゴ號冒險譚」に由來する。ハリーハウゼンの特撮映畫『アルゴ探檢隊の大冒險』はこの神話を原作とし

2013年2月16日土曜日

詞句窯變 ― trans haiku 004 "Diecisiete haiku" / 風花銀次譯

詞句窯變「『命數』抄」   風花銀次

なんとも畏れ多いことだがホルヘ・ルイス・ボルヘスの詩集『命數』(一九八一年、邦譯未刊)に所收の俳句十七句を日本語の五七五に譯してみた。ボルヘスが「飜譯は原文の代替物とはなりえない」といつてんのは承知のうへだし、西班牙語に堪能つてわけでもないんだが、意外となんとかなつちまふもので、譯しちまつたもんはしやうがなく、あの手この手で譯したとはいへ、精確な譯などもとより望むべくもない本歌取りみたいなものだから、なんてこたあない、あたしがボルヘスの句をどう讀んだかを申し述べてゐるだけのことだね。まあ、惡しからず許されよ。

2013年2月14日木曜日

短歌三十首「當世鳴鳥狩」/ 齋藤幹夫

當世鳴鳥狩        齋藤幹夫

書初めに「紫色雁高我開令入給」大師流にしたため
烏帽子覆面赤袴 口語譯懸想けさう文賣ぶみうりねりありくらし
「當世鳴鳥ないとがり」と氣取し甚六が女郞屋ボルデッロにてたくられり
助六をみておもふはとほき世の江戸の吉原中之町かな
梅りて櫻折りたる向い家の關白亭主攝政女房
緋のハーレー・ダヴィッドソンとともにお釋迦の俗物の叔父にぞくぞく
花の定座を橫から掠む粹人は儲け無くとも賣るが喧嘩と

2013年2月13日水曜日

蟲雙紙 022 「すぎにしかた戀しきもの…」/ 風花銀次

 蟲雙紙〈二十二〉      風花銀次

すぎにしかた戀しきもの 針のない時計。こはれた兜虫。蝶や蜻蛉せいれいのうすきはね。蛇の衣のながながしきが、おしへされて文箱の底などにありける。見つけたる。
また、をりからあこがれし蟲の繪姿、雨などふりつれづれなる日、さがし出でたる。こぞのうつせみ。

2013年2月9日土曜日

ひとり兎園會 4 「幽霊」/ 齋藤幹夫

2013年2月6日水曜日

蟲雙紙 021 「こころときめきするもの…」/ 風花銀次

 蟲雙紙〈二十一〉      風花銀次

こころときめきするもの 天牛かみきりの材採集。かつて成蟲のとまりたるよき枝をたづねて、ひとりゆきたる。立ち枯れに日のあたりたる。落ち葉の、あつくつもりて、しめり、にほひたちたる。
材を割り、食痕をたどり、ゆかしう籠りたる幼蟲を見たる。羽化脱出後の材にても、朽木くちき蟋蟀こほろぎなどゐて、いとをかし。とちのきのしたをゆくとき、あしもとに、鐵砲蟲茸てつぱうむしたけのそびゆるも、ふとおどろかる。

2013年2月4日月曜日

詞句窯變 ― trans haiku 003 / 風花銀次譯


Syunsyou no jibun no kage to gokandan

春宵の自分の影と御歡談

2013年2月2日土曜日

短歌&随想「獅歔星」/ 齋藤幹夫

獅歔星 -やほよろづの星々-  齋藤幹夫

春立つを告ぐる星あれ獸園にすすりなきするとらはれの獅子

 春告鳥は鶯。春告草は梅。春告魚は鴎に問ふまでもなく鰊。さて春告蟲は雪溪襀翅せつけいかはげらなのか天鵞絨びろうど吊虻つりあぶか、そもそも有るのか無いのかは銀次あにいにお願ひするとして、春告星といふものも聞いたことが無い。  春の星座の代表格は獅子座。立春の宵の口の東の空に、獲物に跳びかからむがごとく天頂を目指す雄雄しき姿を魅せる。尾の位置に輝くデネボラは、牛飼座のアルクトゥルスと處女をとめ座のスピカで春の大

2013年1月30日水曜日

蟲雙紙 020 「にくきもの…」/ 風花銀次

 蟲雙紙〈二十〉       風花銀次

にくきもの いそぐ事あるをりにきてとびまはるてふてふ。あなづりやすきてふならば、「今度」とてもやりつべけれど、さすがにうらめづらしきてふ、いとにくくむつかし。長押につととまりたる。また、とびたちて、ゆくかとおもへばおなじところにもどりたる。

2013年1月28日月曜日

小説「曼荼羅風」4 -二十四孝- / 齋藤幹夫

2013年1月27日日曜日

小説「身代わり狂騒曲」 03 ‐ 修業の始まり / 風花千里

2013年1月26日土曜日

俳句十句「事後硬直」/ 風花銀次

事後硬直          風花銀次

祝子はふり川に毛のない金魚を放ちけり
嘘つぱちの艷懺悔しに萩寺へ
思惟像の胎内すでに煮凝れり
婦負郡婦中町速星冴え返る
薄明かりして人間の縫ひ目かな
月夜野驛見覺えがある知らぬひと
しぐるゝや身に覺えある比丘尼橋
つちふまずあるとおもへばある春だ
猫となる瞬間の戀猫である
夏も花に硬直一代男かな
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2013年1月23日水曜日

蟲雙紙 019 「人にあなづらるるもの…」/ 風花銀次

 蟲雙紙〈十九〉       風花銀次

人にあなづらるるもの 捕蟲網のほつれ。蟲とりてその蟲をくふ人。

2013年1月21日月曜日

俳句十句「風まかせ」/ 風花千里

風まかせ          風花千里

白南風や水牛のごと走りたし
マテ茶持つ指は微熱を帯びにけり
みつ豆や葉陰に虫の影ふたつ
短夜に鳥の耳目を集めけり
逝く夏に乗じて恋をかすめとる
卵溶く音の軽さや天の川
硝子戸は彼岸の花より赤々し
更待やじくじく疼く熱の花
茸狩や何やら首がむず痒い
まどろみのあはひに匂ふ酸橘かな
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2013年1月18日金曜日

短歌&随想「狼潤星」/ 齋藤幹夫

狼潤星 -やほよろづの星々- 齋藤幹夫

風花のふいに終はりて天空に冴えわたる天狼星シリウスの遠吠え

 シリウスは大犬座のその口元で咆哮のやうな輝きを魅せる。オリオン座のペテルギウス、小犬座のプロキオンとともに冬の大三角形を形成し、地上から見る恆星の中では二番目に明るい。名はギリシア語で「燒き焦がすもの」の意のセイリオスに由來するとされるが、私はあの靑い輝きに、天狼星の名からか、潤みを帶びた悲しげな狼の遠

2013年1月16日水曜日

蟲雙紙 018 「蟲の國より…」/ 風花銀次

 蟲雙紙〈十八〉       風花銀次

蟲の國よりおこせたる文に文字なし。文字なくてなんの文かと思ふらめども、されどそれはゆかしき情などつづられ、子は亡き親を偲べばよし。さて子のためにわざと淸げに卷きたる文を、いとかたく卷かむに、目をかすめ盜むものありて、やがて親にもにぬぬすびとの子のよろこびぞめきたる、いとわびしくすさまじ。

2013年1月13日日曜日

詞句窯變 ― trans haiku 002 "León de Plata" / 風花銀次譯

trans haiku "León de Plata"
On strange occasions I translated haikus that Leonhard of the Argentine novelist produced.
I worried whether I could translate it. However, I tried it because his haikus are attractive. Well, rather may be honkadori as ever, but... I had a good time!
I named "León de Plata" from a part of our name. Incidentally, Gin(銀) is meaning silver(plata).
Ginji Kazahana

 詞句窯變「銀獅子」       風花銀次
縁あつてアルゼンチンの小説家レオンハルト氏から、彼の俳句の日本語譯を賴まれた。あたしでいいんかいな、と思ひつつ、拜見した句がなにやら好ましかつたので、身の程知らずにも引き受けた次第。まあ、飜譯つたつて相變はらず本歌取り的なあれだけどね。そんで銀次の銀とレオンハルトのレオで「銀獅子」なんて洒落てみた。

2013年1月11日金曜日

ひとり兎園會 3 「河童」/ 齋藤幹夫

 ひとり兎園會 ―其之參 河童―      齋藤幹夫


          ○河童かっぱ  川太郎ともいふ(『畫圖百鬼夜行 陰』より  鳥山石燕)

2013年1月9日水曜日

蟲雙紙 017 「すさまじきもの…」/ 風花銀次

 蟲雙紙〈十七〉       風花銀次

すさまじきもの、夜鳴く蟬。冬の蚊。三四月の黒き紅小べにし粉蜱こなだにたかりたる標本。羽化せぬ蛹、繭。やどりばちのうちつづき出できたる。蟲とらぬ蟲屋。撮影にゆきたるにバッテリー切れのカメラ。まいてめづらしき蟲あればいとすさまじ。

2013年1月4日金曜日

小説「身代わり狂騒曲」 02 ‐ 葬式 / 風花千里

2013年1月3日木曜日

短歌&随想「鬼笑星」/ 齋藤幹夫

鬼笑星 -やほよろづの星々- 齋藤幹夫

吉凶のいづれを暗に示さむや元日の星々のどよめき

 星を觀るのに月光は邪魔者扱ひをされると聞く。  二〇一三年一月一日は更待月であり、かなり明るい。冬の澄んだ大氣の中の星は他の季節より輝きを增すと言はれるが、大晦日から元日は大氣を汚す基となるものの動きがかなり納まるからか、尚更に星の輝きが、その月光の下でも增すやうに感じられる。更待月が正中に達する頃の午前二時過ぎ、大熊

2013年1月2日水曜日

蟲雙紙 016 「おひさきなく…」/ 風花銀次

 蟲雙紙〈十六〉       風花銀次

おひさきなく、まめやかに、せまき世間のみ見てゐたらん人は、いぶせくあなづらはしく思ひやられて、なほさりぬべからん人のむすめなどは、蟲をとらせ、世のありさまを俯瞰させならはさまほしう、蟲屋などにてしばしもあらせばや、とこそおぼゆれ。
蟲とりする人をば、ばかばかしうわろきことにいひおもひたる男こそ、いとにくけれ。げにそもまたさることぞかし。いとうつくしき鱗翅目をはじめつかまへ、鞘翅目、半翅目、膜翅目、雙翅目、蜻蛉せいれい目はさらにもいはず、なれど知らざる蟲は多くこそあらめ。身近き蟲ども、山ふかくすむ蟲ども、

2013年1月1日火曜日

詞句窯變 ― trans haiku 001 / 風花銀次譯


Konoha tiru hodo no oto mote tutae keri

木の葉散るほどの音もて傳へけり