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2012年9月22日土曜日

俳句三十句「俳諧無宿」/ 風花銀次

俳諧無宿         風花銀次

旅に倦んで足洗ひけり猫じやらし
冬ふかしさへづりが煮えてもひとり
降る雪や晩節が長すぎるなり
去年今年に去り嫌ひなし
旨ししらうを魂魄の紺透けて
錐揉みに夢見月とはなりにけり
次の間の雛が茶を挽く修羅場かな
嵌め殺す障子のむかうがはに春
餘所妻のゐなじむ家や目借時
櫻烏賊おのれがわたにまみれけり
散るときの所作敎へあふ櫻かな
賽の目に春の行方を尋ねけり
菖蒲湯に皮膚そのほかを洗ひけり
醉生の渡世てふ卯の花くたし

梅雨寒やあたゝめなをす博奕汁
夏座敷とまれかくまれ壺を振る
高市たかまちに影ろふ男となりにけり
だちして盆茣蓙にだれ沈めうか
夏柳だてらにてやんでえめけり
夏痩せの肩で風切る詐欺師美男
もの食へばもの食ふ音す木下闇
女郞花をみなへし仁はいざ義は通らざり
秋旱化札が化けそこねたり
五七五の目はなかりけり初あらし
暮れかねて俳味を隱す手本引き
なんのてんでござんす冬に入る
もうないかもうないか筑波颪かな
朱欒一顆輾轉煩惱卽菩提
したがはぬ耳ふたつあり冬籠る
じふといふこともあるゆゑ生きむ
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