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2013年2月14日木曜日

短歌三十首「當世鳴鳥狩」/ 齋藤幹夫

當世鳴鳥狩        齋藤幹夫

書初めに「紫色雁高我開令入給」大師流にしたため
烏帽子覆面赤袴 口語譯懸想けさう文賣ぶみうりねりありくらし
「當世鳴鳥ないとがり」と氣取し甚六が女郞屋ボルデッロにてたくられり
助六をみておもふはとほき世の江戸の吉原中之町かな
梅りて櫻折りたる向い家の關白亭主攝政女房
緋のハーレー・ダヴィッドソンとともにお釋迦の俗物の叔父にぞくぞく
花の定座を橫から掠む粹人は儲け無くとも賣るが喧嘩と
花のもとにてさしつさされつ 義によつてそれがし助太刀いたし候
姫赤立羽ひめあかたては捕らへむとしてしたり本日出雲阿國の忌日
刎頚の友の身の丈六フィート超えおそらくは彼奴、ガニメアン
綠陰突如明るみに出づ國道の轢死のししにむらがる鴉
綠靑のの單車屋の主人あるじ眼鏡レンチで薔薇指し示す
日本領空侵犯嬉し迷蝶の淡靑長尾うすあををなが波紋うらなみ
徑山寺味噌を肴にさかづきをあぐ友の仇名「赤翡翠あかしようびん」
どうせ脱ぐからかまふものかと土砂降りの鵲橋を傘差さずして
芭蕉科の旅人の木とたれ名づけしや蝉しぐれしぐれにしぐれ
靑眞珠色の高千穗蛇の餌冷凍鼠十匹じつぴ千圓
フラー忌の今日もどこかで嬰兒みどりごの産聲も死のはじまりとなり
桔梗きちかうを中心にして團欒のわれの家族はたぶんCG
古書肆店頭私家版源氏物語五十五帖「臭桐」燒アリ
叶ふことなき片戀あはれ門限の必殺釣甁落しを食らへ!
女敵は花のかんばせ月の眉雪のはだへの風流誑し
昨日の友も今日は敵にて共食ひの背黑蝗に喉佛あり
いにしへの生墻に「屋彌樣於路志藥あり」てふがびらびら
東西東西、昔 娘 戀 傾 秋 風あねのこひぢのはてのきつさき夢之段。 始 左はじまりさやう。
忍るは刄でかざすしたごころ甘露子ちよろぎ甘酢に浸したりけり 
諸事情により張り倒したし翠 玉 色エメラルド・グリ-ンの洟を埀らせる小僧
雪嶺のこの大男モンブランたひらげるとか 一度に五個も
『假名手本忠臣藏』に發作性頭位眩暈症にてゆけず
ドナティアン・アルフォンス・フランソワ・ド・サド忌 に羽交ひ締めにされたい
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