〈大江戸鉄火双紙 二〉座敷鷹 風花千里
──こりゃあ、面倒な雲行きになってきたぞ。利 平 は、唇を噛んで俯いた。伊 勢 屋 利平は日本橋室町に店を構える塗物問屋の主人。取引先の材木問屋、山正文五郎 に招かれ、深川木場の屋敷に来ていた。 利平が通された離れには、利平を含めて二十人を超える人々が集っていた。知らない顔ばかりだが、集まった輩は血気に逸っているがごとく、そわそわと落ち着きがなかった。 「伊勢屋さん、あんた糞真面目で通っているがよ、商売の勘を養うつもりで、たまには勝負事をやってみねえか」 文五郎が、子猫を弄うような気軽さで、利平に誘いを掛けてきた。 「勝負事って、博打か何かですか」利平は渋面をつくった。
2017年6月21日水曜日
2017年6月19日月曜日
短歌十五首「でいどりぃむ・びりぃばぁ」/ 風花銀次
でいどりぃむ・びりぃばぁ 風花銀次 半玉ハ未成熟ナル玉體ノ謂デアリ似而非通語ナリ(嘘)蠅聲 す左翼どころか うようよと雨後の筍のごとし、うるさし 朋友相信シ すなはち筋 書 通 り の必殺掌返しをくらへ! 廻廊に奧こそあらね 見え隱れしつつぬばたまの黑歷史 氣がつけば戰爭の後ろに立つてゐた 失ひしは顏色か、顏か 菊科植物息絶え絶えに枯葎より「朕惟ハザレド朕アリ」 「惟フ」と「思フ」の違ひにおもひいたさざること久し あはれ菊に首なし
2017年6月1日木曜日
短歌十五首「エクリプス館」/ 風花銀次
エクリプス館 風花銀次 「飛行機はひたぶるに地を戀へり」とぞはつなつ誤配の葉書が屆く われのかたはらに見知らぬ戀人が咲 まふ〈エクリプス館〉棧敷にて火星 と金星 、二 十 年 ごとのきぬぎぬのかなしみかさぬ永久 にかさねよ あまいあまいカフェ・ド・ボルジア飮みほして今夜は死んだやうに眠らう不 忍 戀 とよ意氣のきはみにて淡淡 とたまかぎる遊冶郞 彼女の部屋に三日ゐつづけいまさらに鈍色の痩身器おそろし 醒めつつ愛を語らふわれのまなかひにゆりかうゆられ百合鴎飛ぶ
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