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2013年3月30日土曜日

短歌三首「縮緬雜魚」/ 齋藤幹夫

縮緬雜魚          齋藤幹夫


海苔炙るにほひ纏ひてなまよみの甲斐性無しの屈強の彼奴

縮緬裝袖珍本の『戀敵江戸彼岸櫻花辯 仇討の悲願實りて血飛沫の舞ふ』

禁欲の續く眞晝に禁斷の土地に拔かれつぱなしの野蒜
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2013年3月25日月曜日

小説「曼荼羅風」6 -小粒- / 齋藤幹夫

2013年3月22日金曜日

小説「身代わり狂騒曲」 05 ‐ 連 / 風花千里

2013年3月18日月曜日

俳句十句「急於星火」/ 風花銀次

急於星火        風花銀次

星の香のくちひげほしき夜長かな
銀漢に銀のいちもつ田之助忌
紅鶴橫死星使遁走したる後
星のうちの惑星に棲む男女なんによ哉
讀みさしてなべて星讖の書と思ふ
星貨舖に箒が店晒しの刑
星の鬣梳く佯狂の若きかな
らちもなき遊星學や春しぐれ
彗星の背姿うしろつきよき花の上
超音波檢査へを見にゆかな

2013年3月15日金曜日

短歌&随想「角曖星」/ 齋藤幹夫

角曖星 -やほよろづの星々-  齋藤幹夫

生娘きむすめみ桃やくらむをとこなどつのひとつゆいみじきけもの

 魔法や妖精が出て來て、血みどろや殘虐な死の描寫の無く、大人が子供に見せられる物が「ファンタジー」として大衆にも認知されてゐる向きが多いにある。反面「ダーク・ファンタジー」なんて言葉もあつたりで「ファンタジー」といふ物が至極曖昧な定義であるから、私はこの言葉が大嫌ひ。そのファンタジー物の中で、一角獸ユニコ|ンは小説や漫畫、ゲエムの世界の西洋龍ドラゴン天馬ペガサスと竝び重寶され大衆の認知度も高い。

2013年3月6日水曜日

蟲雙紙 025 「拜み蟲は…」/ 風花銀次

 蟲雙紙〈二十五〉      風花銀次

拜み蟲は顔よき。拜み蟲の顔をつとまもらへたるこそ、その祈ることのたふとさもおぼゆれ。ひが目しつるとふと思はるるに、一心にお命頂戴せむとかまへたる。このことは書きとどむべし。すこし年などのよろしきほどは、かやうのことを罪ふかく思はれけめ、今は心いとかろし。

2013年3月4日月曜日

ひとり兎園會 5 「蜘蛛」/ 齋藤幹夫

 ひとり兎園會 ―其之伍 蜘蛛―                 齋藤幹夫

文化元子年、吟味方改役西村鐵四郞、御用有レ之、駿州原宿の本陣に止宿せしが、人少にて廣き家に泊まり、夜中にふと目覺めて、牀の閒の方を見やれば、鏡の小さきごとき光あるもの見えける故、驚きて、(中畧)燈火など附けんと周章せし。右の(その)もの音に、亭主も燈火を持出て、彼の光ものを見しに、一尺あまれるくもにてぞありける。打寄りて打殺し、早々外へ掃出しけるに、程なく湯どのの方にて、恐ろしきもの音せし故、かの處に至り見れば、戸を打倒して、外へ出しやうの樣子にて、貮寸四方程の蜘のからびたるありける。臥所へ出しも湯殿に殘りしも同物ならん。いかなる譯にやと語りぬ。           「耳嚢」巻之五より(文中括弧は引用者)

2013年3月2日土曜日

詞句窯變 ― trans haiku 005 / 風花銀次譯


Haru wa akebono tennyo mizukara obi o toku

春はあけぼの天女みづから帶を解く

2013年3月1日金曜日

短歌&随想「蟹薄星」/ 齋藤幹夫

蟹薄星 -やほよろづの星々-   齋藤幹夫

かの星の 耀 かがやき薄冰うすらひに沿ひひたすらによこばひの蟹

 山陰の日本海で水揚げされる松葉蟹は商標のやうなもので正式和名は楚 蟹ずわいがに。 別の種類で松葉蟹の和名を持つ扇蟹科松葉蟹屬の蟹にとつては遣る瀨無さ一杯であらう。人閒樣にとつては何て呼ばれやうが賣れればいいのだから、そんなことにはとんとお構ひ無し。蟹の氣持なんざ考へてられるか、否、蟹なんぞに氣持を抱く腦味噌なんかあるものか、旨い味噌がたつぷりと詰まつてゐれば、それでいいのだ、と云はむばかり。