しばしお待ちを...

2018年8月22日水曜日

詞句窯變 ― trans haiku 011 / 風花銀次譯


いろちがひの蜥蜴つるめり夏の夜

2018年8月19日日曜日

小説「蝶々雲――かむろ菊乃の廓文章」10 / 風花千里

2018年8月12日日曜日

短編小説「毛抜き」/ 風花千里

毛抜き                  風花千里

 イラついているのは残暑のせいばかりではない。
 胃の奥にむかつきを感じながら、鏡台の引き出しから毛抜きを取り出す。ステンレス製のエロティックなまでに美しいラインを持つ毛抜き。それが、窓越しに入ってくる陽光を受けて妖しく光っている。
 イライラするときは毛を抜くに限る。眉、腕、脇……全身の毛が私の心を鎮めようとおとなしく待っている。穿いていたジーンズの裾をめくり上げる。今日は脛にしよう。毛抜きの先で脛の毛の根元をはさみ、毛の流れに逆らわずに引っぱる。ぷつ。わずかな手ごたえがある。毛抜きの先端部分に毛が一本、しっぽを掴まれたネズミのように捕らわれている。ぷつ。ぷつ……一本また一本。直径5センチほどの円上にある毛を抜き終えると、むかつきが少し収まった気がする。