2018年6月30日土曜日
2018年6月27日水曜日
狂歌十首「新作かぶき『HINOMARU』序幕 奉安殿の場」/ 風花銀次
新作かぶき「HINOMARU」 序幕 奉安殿の場 風花銀次 晝間だが蜩 の聲、下手 より男らがばらばらと登場 やや遠く切れ切れに玉音放送、日の本の彼 方 此 方 で暗挑 國民服の男其の一「日ッ本を家 體 崩しに致し候」 唄。〽千代に八千代になどと、契情 の誠のはうが信 らしうて…… 蟬の聲、鳴物止 みて三人の國民服齊 しく思ひ入れ 「翼贊の歌詠まざるは幸運に過ぎぬ」如何にもと宜しく科
2018年6月23日土曜日
小説「蝶々雲――かむろ菊乃の廓文章」06 / 風花千里
蝶々雲――かむろ菊乃の廓文章 風花千里
第六章 四人の禿 「歌乃、行くよ」 まさに阿吽の呼吸とでも言おうか。菊乃の呼びかけに、歌乃が間髪を入れず「うん!」と頷いた。 「千鳥と波路に話を聞きに行くのね」 歌乃の瞳がいつになく強い光を湛えている。 波路と同様、千鳥も、おっとり構えた歌乃を陰で小馬鹿にしている。歌乃も、千鳥らの陰湿な言動を肌で感じているはずだった。 姉女郎のお墨付きを得て、菊乃とともに話を聞きに行くとなれば、いつもいじめられている鬱憤を晴らせる絶好機だと思っているのかもしれない。 いつもと違う歌乃の積極的な様子に、菊乃は
2018年6月16日土曜日
短歌五首「半分、赤い」/ 風花銀次
半分、赤い 風花銀次 いはずもがなけふもたれかの忌日にて半分赤い墓域ありけり 茶房太白地階の奧で差し向かふ可塑的 な女友達 鞭ふるふときにもつとも美しき騎手が大映しのテレヴィジョン 實は曾我五郞ならねど助六といへる魚 屋の閉店セール みだりがはしくも付箋のあまたなる記紀 亡き父の書架にまします
2018年6月9日土曜日
小説「蝶々雲――かむろ菊乃の廓文章」05 / 風花千里
蝶々雲――かむろ菊乃の廓文章 風花千里
第五章 化粧う女たち 「歌乃ぉ、あんたの《江戸の水》さ、ちょっと貸してよ」 菊乃は、湯上がりで火照った頬をぺちぺちと叩きながら、歌乃に請うた。 《江戸の水》とは、近年、江戸で流行している化粧水。今は亡き、式亭三馬とかいう戯作者が、副業で始めた生薬屋から売り出した代物だった。 《江戸の水》は、綺麗な硝子瓶に入っている。菊乃も歌乃も初糸も、綾錦からこの化粧水を一瓶ずつもらっていた。 「やあよ。菊乃に貸すと、一気に中身が減るんだもの」 歌乃は、口をむうっと尖らせて拒んだ。 「わっちの瓶の中身は、もうなくなっちゃった
2018年6月4日月曜日
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