2013年6月30日日曜日
2013年6月28日金曜日
小説「身代わり狂騒曲」 08 ‐ 扇屋 / 風花千里
身代わり狂騒曲 風花千里
第八章 扇屋 一 吉原大門は、板葺き屋根付きの平凡な冠木門だ。 門の外から中を覗くと左手に辻行燈が見える。客待ちの駕 籠 舁 きが暇そうに時間を潰していた。 時刻は六つ前。駕籠で大門を出る客はほとんどいなかった。吉原の賑わいは、これから始まるのだ。 門を潜って左には面番所、右には四郎兵衛会所が設けられ、不審者や遊女の逃亡を監視している。さらに進むと、軒先に鬼簾を掛けた引手茶屋が両側に並んでいた。 「おんや、重坊 じゃねえか。この間は、いいお客を紹介してくれて、ありがとよ」 一軒の引手茶屋の前に出ていた若い衆 が、威
2013年6月18日火曜日
ひとり兎園會 7 「ダイダラボッチ」/ 齋藤幹夫
ひとり兎園會 ―其之漆 ダイダラボッチ― 齋藤幹夫
那賀郡 。平津驛家 の西 一二里 に岡 有 り。名 を大櫛 と曰 ふ。上古 に人有 り、體極 めて長大 きに、身 は丘 壟 の上 に居 りて、蜃 を採 りて食 ふ。其 の食 へる貝 、積 聚 りて岡 と成 りき。時 の人大朽 の義 を取 りて、今大櫛 の岡 と謂 ふ。其 の大人 の踐蹟 は、長 さ三十餘步 、廣さ二十餘步 あり。尿 の穴 址 は、二十餘步許 あり。 「常陸風土記」より
2013年6月14日金曜日
俳句十句「有翅卵生」/ 風花銀次
有翅卵生 風花銀次 冷やし瓜なまなかに冷え世紀末 とざいとうざいわが謹製の兒が步く 炎天倶に戴きて父子蒸發す 秋ぞろ〴〵と筋肉から筋肉へ 句碑の句が消えつゝありて良夜かな なが〳〵と神の留守居の木蔦かな日出處 の寒の烏を見にゆかむ 花の木はまだしづかなり初舞臺 らうたしや夢見月的夢のひと 春陰の卵生の父子わらはざり
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