2012年11月30日金曜日
2012年11月28日水曜日
2012年11月26日月曜日
小説「曼荼羅風」2 -火事むすこ- / 齋藤幹夫
曼荼羅風 齋藤幹夫
――其之弐 火事むすこ―― 「おとっつあんとおまえのうわさばかりし てるんだよ……『こうやって身代はのびる ばかりだが、これをゆずるものもない。ど うかあれがまともになってくれれば、この 身代はすっかりゆずってやるんだが……ま あ、どうしているのか? かわったことは ないか? それとも死んじまったか?』と、 いって、いつもおとっつあんとうわさばか り……おまえが火事が好きだから、どうか 世間に大火事があってくれれば会えるんだ がと……」 古典落語「火事むすこ」より
2012年11月23日金曜日
俳句三十句「從容優樂」/ 風花銀次
從容優樂 風花銀次 日のもとの龜鳴く國に生まれけり 夢の世へをのこ女體より出で來し 初音ふとやみたるときが美聲かな 梅が香やそれよりも子の眉ほのか産土 にほの〳〵白しこぼれ梅 春風や産立飯 に焦げすこし 念者とも父ともおもへ梅の空 春宵の嬰兒正調にて泣けり 花をいひ風をいひけり宮參り ゆふされば夕櫻なるにぎみたま 花の木の細 しき管や水の音 優しにつぽんだんじなる假名初幟 腰のもののびてちゞんで五月かな をのこ汝れ命を愛 しめ葛ざくら
2012年11月21日水曜日
蟲雙紙 010 「正月一日、三月三日は…」/ 風花銀次
蟲雙紙〈十〉 風花銀次 正月一日、三月三日は、よろづまゆこもりたる。 五月五日、豆 娘 むつびくらしたる。 七月七日は、機織蟲 鳴きて、芋の露にうつりたる空いと高く、雲ひとつ見えたる。 九月九日は、あかつきがたより雨少し降りて、お菊蟲も濡れそぼち、黃金 色にかがよひ、大明神などともてはやされて、アリストロキア酸を蓄へたれど、やがてなよやかな蝶いでて、ややもすれば、こはれむばかりに見えたるもをかし。
2012年11月19日月曜日
短歌十首「吉丁繪」/ 齋藤幹夫
吉丁繪 齋藤幹夫 ふとしかす京の準絶滅危惧は東土龍も東男も 吾妹子よ外へな出でそそこここに五月蠅なす神おはしたまふに 老いてなほ火遊び むかし祖母 に蘆薈 を塗られたりし思ひ出 金龍山淺草寺鬼燈市に 百二十六年後にも再 た 楡に吉丁蟲 繪柄のアロハシャツの彼奴 髭風吹いて罷り越したり 赫耀と照れる水面 のうらがはに男寡婦の鮎竝 默し
2012年11月16日金曜日
2012年11月14日水曜日
蟲雙紙 009 「童子にさぶらふ蟲は…」/ 風花銀次
蟲雙紙〈九〉 風花銀次 童子にさぶらふ蟲は、兜蟲のつがひにて、かぶぶん、ぶぶぶんと名づけ、いみじうをかしければ、かしづかせたるが、あるとき防蟲シートをやぶり逃げたるを、童子「いづこに行きたるか、出でよ」とよぶに、出でず。日のさし入らざるにうち眠りてゐむか、さらば褒美取らせむとて「かぶぶん、いづら。ぶぶぶん、いづら。昆蟲ゼリー食へ」といへど、かさりともいはで、ゆくへ杳としてしれず。 「あはれ、いみじうゆるぎ步きつるものを。指 につきし蜜をぶぶぶんになめさせ、かぶぶんの大いなる角にひもかけて貨車を牽か
2012年11月12日月曜日
ひとり兎園會 1-1 「虛舟」/ 齋藤幹夫
ひとり兎園會 ―其之壹 虛舟― 齋藤幹夫
享和三年癸亥の春二月廿二日の午の時ばかりに、當時寄合席小笠原越中守知行所常陸國はらやどりといふ濱にて、沖のかたに舟の如きもの遙に見えしかば、浦人等小船あまた漕ぎ出だしつゝ、遂に濱邊に引きつけてよく見るに、その舟のかたち、譬へば 香 盒 のごとくにしてまろく長さ三間あまり、上は硝子障子にして、チヤンをもて塗りつめ、底は鐵の板がねを段々筋のごとくに張りたり。海嚴にあたるとも打ち碎かれざる爲なるべし。上より内の透き徹りて隱れなきを、みな立ちよりて見てけるに、そのかたち異樣なるひとりの婦人ぞゐたりける。 「虛舟の蠻女」より 曲亭馬琴
2012年11月7日水曜日
蟲雙紙 008 「我らが家に…」/ 風花銀次
蟲雙紙〈八〉 風花銀次 我らが家に、胡 麻 小 灰 蝶 の童 出でさせ給ふに、陣はをれど、ものものしげにむかへ据ゑ、働き蟻ども、はらからとへだてなく世話すべきものとおもひあなづりたるに、忍びていとけなき者どもをとりてくらひ、さはりてえ出でねば門に近う蛹化し、羽化したるを咎むれど、聞きもあへずあわて飛び立ちけり。いとにくく、腹立たしけれど、いかがはせん。愛らしう見ゆるもねたし。
2012年11月2日金曜日
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