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2012年9月28日金曜日

小説「身代わり狂騒曲」 00 ‐ 源内死す / 風花千里

2012年9月26日水曜日

蟲雙紙 002 「昆蟲は…」/ 風花銀次

 蟲雙紙〈二〉        風花銀次

昆蟲は、鱗翅目鞘翅目直翅目膜翅目半翅目など翅のありさまにてわくるがつねなるに蜻蛉せいれい目てふすずやかなる名ありてをかし。

2012年9月22日土曜日

俳句三十句「俳諧無宿」/ 風花銀次

俳諧無宿         風花銀次

旅に倦んで足洗ひけり猫じやらし
冬ふかしさへづりが煮えてもひとり
降る雪や晩節が長すぎるなり
去年今年に去り嫌ひなし
旨ししらうを魂魄の紺透けて
錐揉みに夢見月とはなりにけり
次の間の雛が茶を挽く修羅場かな
嵌め殺す障子のむかうがはに春
餘所妻のゐなじむ家や目借時
櫻烏賊おのれがわたにまみれけり
散るときの所作敎へあふ櫻かな
賽の目に春の行方を尋ねけり
菖蒲湯に皮膚そのほかを洗ひけり
醉生の渡世てふ卯の花くたし

2012年9月19日水曜日

蟲雙紙 001 「春は…」/ 風花銀次

 蟲雙紙〈一〉        風花銀次

春は菜の花。こがね色のなみうつひまの葉がくれに、紅 娘 てんたうむしの、うしろよりひよどりごえのしかたでしかけたる。
夏ははす。花はまだなれど、しのぶる鯉の浮き葉をゆりうごかすもをかし。となめせし豆娘いととんぼとまりて、かげもハート型なるはさらなり。
秋はいろいろの草こきまぜたるなかに鳴く蟲うたひつのりて相聞のごとしとおもほえど返歌なし。
冬は小楢。うらがれのこずゑに參星みつぼしかかりて、風花するとみれば、妻を求めて飛びまどふ冬尺蛾ふゆしやく。妻に翅なしとぞ、あはれ。

2012年9月15日土曜日

短歌三十首「戲遊軍嬉遊曲」/ 齋藤幹夫

戲遊軍嬉遊曲       齋藤幹夫

梅擬一枝手折りてすゑの世にいでたる花の景季もどき
料理敎室混じる二、三のますらをに薔薇ばらばらにばらされあはれ
梅雨の世につゆほどおもふことなけれども雨男佐佐木信綱
屁理屈のなまぐさき惡友をくろ握り潰せし拳
愛でもくらひやがれ!文月ふづきの水槽に幾色か缺く 虹 霓 魚レインボウ・フィッシュ
愛人のはだへにふれず牀の閒にかざりしでむとしよう
われ迷ひ込みたるゆゑに新宿區百人町に吹くむかひかぜ

2012年9月8日土曜日

俳句十句「野暮錄」/ 綠月亭

野暮錄         綠月亭

閻魔參若いの背にうちむかふ
すててこの臑毛逆撫ず女人かな
夏芝居跳ねて砂利共惡だくみ
ゼラニウム居候より賜るも
晩夏おそなつや濡るるはだへの馬わかし
噓にうそ混ぜてし灸 花やいとばな
蟬踏んで大音聲だいおんじやうの蟲の息
寢屋の鍵束野暮なり聖母昇天祭
銀漢を跳越えて來し御俠振おきやんぶり
織姫や勝鬨のごと高鼾
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2012年9月5日水曜日

Baloney! - 「花零れり」/ 風花銀次

 花零れり◎風花銀次

 ご存じの方はご存じのとおり(あたりきの話で、ご存じでない方はご存じない)あたしはへたの横好きで虫や花やを写真に撮ったりなどして遊んでますが、生まれついての酒飲みゆえ運転免許なんて結構なものを持っていず、いくら虫がたくさんいそうでも、うっかり郊外の山奥なんて行ったら帰ってこらんなくっちゃうおそれ大いにこれありだから、公共交通機関だけで移動できる都区内での撮影がもっぱら。
 したがって虫といっても写ってるだけでみんなの気を引くような珍虫奇虫のたぐいはまったくなく、そんじょそこらにいくらでもいるありふれた虫のあれこればかり。

2012年9月1日土曜日

俳句十句「去年今年」/ 風花千里

去年今年          風花千里

まどろみの枕辺に立つ楓かな
草紅葉 爪に獣の棲むけはひ
しまうまの縞から殺気立ち上る
草原くさはらの乳房の陰で仔馬肥ゆ
子を殴るけんの痺れやまつぼくり
溜めの食 玩フィギュアの山に月笑ふ
ひだまりに御縁をつむぐ鎖編み
凩に「こーとろことろ」の唄を聴く
霜柱 産毛の少し濃くなりぬ
すべりだい跨ぎ越す子や去年今年
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