2012年9月30日日曜日
2012年9月28日金曜日
小説「身代わり狂騒曲」 00 ‐ 源内死す / 風花千里
身代わり狂騒曲 風花千里
序章 源内死す 一 明和六年如月晦日(一七六九年四月六日)。 昨夜から季節外れの雪が降り続いている。 雪は江戸の町を覆い尽くし、明け方からは吹雪く有様。いつもは五月蠅い近所の餓鬼共も、今日は家の中で鳴りをひそめていた。 「馬鹿野郎ぉ……何でこんなに早く逝っちまったんだ」 座敷に安置された亡骸に取りすがり、絵師の鈴木春信が癇の強そうな声で泣いている。昨日から一睡もしていないので、目の下に薄墨を流したように隈ができていた。布団に寝かされた仏より、よほど死人めいた形相だった。 「春信さんよ、そんなに揺さぶるな。仏が仰天して、三途の川の途中で溺れてしまうぞ」
2012年9月26日水曜日
2012年9月22日土曜日
俳句三十句「俳諧無宿」/ 風花銀次
俳諧無宿 風花銀次 旅に倦んで足洗ひけり猫じやらし 冬ふかしさへづりが煮えてもひとり 降る雪や晩節が長すぎるなり 去年今年二 十 一 目 に去り嫌ひなし 旨ししらうを魂魄の紺透けて 錐揉みに夢見月とはなりにけり 次の間の雛が茶を挽く修羅場かな 嵌め殺す障子のむかうがはに春 餘所妻のゐなじむ家や目借時 櫻烏賊おのれが腸 にまみれけり 散るときの所作敎へあふ櫻かな 賽の目に春の行方を尋ねけり 菖蒲湯に皮膚そのほかを洗ひけり 醉生の渡世てふ卯の花くたし
2012年9月19日水曜日
蟲雙紙 001 「春は…」/ 風花銀次
蟲雙紙〈一〉 風花銀次 春は菜の花。こがね色のなみうつひまの葉がくれに、紅 娘 の、うしろよりひよどりごえのしかたでしかけたる。 夏ははす。花はまだなれど、しのぶる鯉の浮き葉をゆりうごかすもをかし。となめせし豆娘 とまりて、かげもハート型なるはさらなり。 秋はいろいろの草こきまぜたるなかに鳴く蟲うたひつのりて相聞のごとしとおもほえど返歌なし。 冬は小楢。うらがれのこずゑに參星 かかりて、風花するとみれば、妻を求めて飛びまどふ冬尺蛾 。妻に翅なしとぞ、あはれ。
2012年9月15日土曜日
短歌三十首「戲遊軍嬉遊曲」/ 齋藤幹夫
戲遊軍嬉遊曲 齋藤幹夫 梅擬一枝手折りてすゑの世にいでたる花の景季もどき 料理敎室混じる二、三のますらをに薔薇ばらばらに殺 されあはれ 梅雨の世につゆほどおもふことなけれども雨男佐佐木信綱 屁理屈の腥 き惡友を毆 つ黑 南 風 握り潰せし拳 愛でも啖 ひやがれ!文月 の水槽に幾色か缺く虹 霓 魚 愛人の肌 にふれず牀の閒にかざりし合 歡 を愛 でむとしよう われ迷ひ込みたるゆゑに新宿區百人町に吹くむかひかぜ
2012年9月12日水曜日
2012年9月8日土曜日
俳句十句「野暮錄」/ 綠月亭
野暮錄 綠月亭 閻魔參若い» PDFで読む衆 の背にうち對 ふ すててこの臑毛逆撫ず女人かな 夏芝居跳ねて砂利共惡だくみ ゼラニウム居候より賜るも晩夏 や濡るる肌 の馬夭 し 噓にうそ混ぜてし夜 半 の灸 花 蟬踏んで大音聲 の蟲の息 寢屋の鍵束野暮なり聖母昇天祭 銀漢を跳越えて來し御俠振 り 織姫や勝鬨のごと高鼾
2012年9月5日水曜日
Baloney! - 「花零れり」/ 風花銀次
花零れり◎風花銀次 ご存じの方はご存じのとおり(あたりきの話で、ご存じでない方はご存じない)あたしはへたの横好きで虫や花やを写真に撮ったりなどして遊んでますが、生まれついての酒飲みゆえ運転免許なんて結構なものを持っていず、いくら虫がたくさんいそうでも、うっかり郊外の山奥なんて行ったら帰ってこらんなくっちゃうおそれ大いにこれありだから、公共交通機関だけで移動できる都区内での撮影がもっぱら。 したがって虫といっても写ってるだけでみんなの気を引くような珍虫奇虫のたぐいはまったくなく、そんじょそこらにいくらでもいるありふれた虫のあれこればかり。
2012年9月1日土曜日
俳句十句「去年今年」/ 風花千里
去年今年 風花千里 まどろみの枕辺に立つ楓かな 草紅葉 爪に獣の棲むけはひ しまうまの縞から殺気立ち上る» PDFで読む草原 の乳房の陰で仔馬肥ゆ 子を殴る拳 の痺れやまつぼくり塵 芥 溜めの食 玩 の山に月笑ふ ひだまりに御縁をつむぐ鎖編み 凩に「こーとろことろ」の唄を聴く 霜柱 産毛の少し濃くなりぬ すべりだい跨ぎ越す子や去年今年
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