しばしお待ちを...

2013年2月27日水曜日

蟲雙紙 024 「叩き網は…」/ 風花銀次

 蟲雙紙〈二十四〉      風花銀次

叩き網はのどかにやりたる。はげしきはわろく見ゆ。
捕虫網ははしらせたる。吸蜜中の蝶などを捕らへむに、ふと見やるほどもなくひらめき、そよかぜにふかれたるごとき花ばかりのこりたるこそおかしけれ。はたはたと花散らすはいとわろし。

2013年2月25日月曜日

小説「曼荼羅風」5 -もう半分- / 齋藤幹夫

2013年2月22日金曜日

小説「身代わり狂騒曲」 04 ‐ 重三郎の懸念 / 風花千里

2013年2月20日水曜日

蟲雙紙 023 「こころゆくもの…」/ 風花銀次

 蟲雙紙〈二十三〉      風花銀次

こころゆくもの くはしくかいたる昆蟲圖譜の、蟲に影なかりける。夏山へのゆくさに、さきこぼれて、をのこどもいとおほく、蟲よくとる者の網ふりたる。しろくきよげなる捕蟲網に、いといと小さき蟲をとるべく花をすくへば、花天牛はなかみきり入りたる。花天牛に、すこしまざりたる。ものよくいふ蟲屋ゐて、ひとのとりたる蟲の、種の同定したる。谷におりて飮む水。
つれづれなる折に、いとあまりめづらしうもあらぬ盜蛾とりがの來て、世の中の物がたり、此の頃あることの、をかしきも、にくきも、あやしきも、これかれにかかりて、おぼろ

2013年2月18日月曜日

短歌&随想「船霞星」/ 齋藤幹夫

船霞星 -やほよろづの星々-    齋藤幹夫

神々も挑みたりけむはるかなる沖の霞よ さらば星船

 全天で最も大きい星座は海蛇座。春の代表的な星座で、獅子座の足元にその巨體をうねらせてゐる。頭を地上に見せ始めその全體が天を這ふやうになるまでには凡そ十時閒程掛る。この海蛇座が全天一位を獲得したのは今から三百六十年程前のこと。それまではアルゴ座が全天一位の座に君臨してゐた。その大きさは海蛇座の一・四五倍。  アルゴ座は希臘神話の「アルゴ號冒險譚」に由來する。ハリーハウゼンの特撮映畫『アルゴ探檢隊の大冒險』はこの神話を原作とし

2013年2月16日土曜日

詞句窯變 ― trans haiku 004 "Diecisiete haiku" / 風花銀次譯

詞句窯變「『命數』抄」   風花銀次

なんとも畏れ多いことだがホルヘ・ルイス・ボルヘスの詩集『命數』(一九八一年、邦譯未刊)に所收の俳句十七句を日本語の五七五に譯してみた。ボルヘスが「飜譯は原文の代替物とはなりえない」といつてんのは承知のうへだし、西班牙語に堪能つてわけでもないんだが、意外となんとかなつちまふもので、譯しちまつたもんはしやうがなく、あの手この手で譯したとはいへ、精確な譯などもとより望むべくもない本歌取りみたいなものだから、なんてこたあない、あたしがボルヘスの句をどう讀んだかを申し述べてゐるだけのことだね。まあ、惡しからず許されよ。

2013年2月14日木曜日

短歌三十首「當世鳴鳥狩」/ 齋藤幹夫

當世鳴鳥狩        齋藤幹夫

書初めに「紫色雁高我開令入給」大師流にしたため
烏帽子覆面赤袴 口語譯懸想けさう文賣ぶみうりねりありくらし
「當世鳴鳥ないとがり」と氣取し甚六が女郞屋ボルデッロにてたくられり
助六をみておもふはとほき世の江戸の吉原中之町かな
梅りて櫻折りたる向い家の關白亭主攝政女房
緋のハーレー・ダヴィッドソンとともにお釋迦の俗物の叔父にぞくぞく
花の定座を橫から掠む粹人は儲け無くとも賣るが喧嘩と

2013年2月13日水曜日

蟲雙紙 022 「すぎにしかた戀しきもの…」/ 風花銀次

 蟲雙紙〈二十二〉      風花銀次

すぎにしかた戀しきもの 針のない時計。こはれた兜虫。蝶や蜻蛉せいれいのうすきはね。蛇の衣のながながしきが、おしへされて文箱の底などにありける。見つけたる。
また、をりからあこがれし蟲の繪姿、雨などふりつれづれなる日、さがし出でたる。こぞのうつせみ。

2013年2月9日土曜日

ひとり兎園會 4 「幽霊」/ 齋藤幹夫

2013年2月6日水曜日

蟲雙紙 021 「こころときめきするもの…」/ 風花銀次

 蟲雙紙〈二十一〉      風花銀次

こころときめきするもの 天牛かみきりの材採集。かつて成蟲のとまりたるよき枝をたづねて、ひとりゆきたる。立ち枯れに日のあたりたる。落ち葉の、あつくつもりて、しめり、にほひたちたる。
材を割り、食痕をたどり、ゆかしう籠りたる幼蟲を見たる。羽化脱出後の材にても、朽木くちき蟋蟀こほろぎなどゐて、いとをかし。とちのきのしたをゆくとき、あしもとに、鐵砲蟲茸てつぱうむしたけのそびゆるも、ふとおどろかる。

2013年2月4日月曜日

詞句窯變 ― trans haiku 003 / 風花銀次譯


Syunsyou no jibun no kage to gokandan

春宵の自分の影と御歡談

2013年2月2日土曜日

短歌&随想「獅歔星」/ 齋藤幹夫

獅歔星 -やほよろづの星々-  齋藤幹夫

春立つを告ぐる星あれ獸園にすすりなきするとらはれの獅子

 春告鳥は鶯。春告草は梅。春告魚は鴎に問ふまでもなく鰊。さて春告蟲は雪溪襀翅せつけいかはげらなのか天鵞絨びろうど吊虻つりあぶか、そもそも有るのか無いのかは銀次あにいにお願ひするとして、春告星といふものも聞いたことが無い。  春の星座の代表格は獅子座。立春の宵の口の東の空に、獲物に跳びかからむがごとく天頂を目指す雄雄しき姿を魅せる。尾の位置に輝くデネボラは、牛飼座のアルクトゥルスと處女をとめ座のスピカで春の大