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2013年1月23日水曜日

蟲雙紙 019 「人にあなづらるるもの…」/ 風花銀次

 蟲雙紙〈十九〉       風花銀次

人にあなづらるるもの 捕蟲網のほつれ。蟲とりてその蟲をくふ人。

 田舎に住んでた子供のころ使っていた捕虫網(なんて上等な言葉を当時は知らずで虫とり網とのみ)は、竹の棒の先っちょの針金の輪っかにみかんのネットみたいのを取り付けた安っぽいしろものでしたが、そうそうしょっちゅうは買ってもらえず、うっかり藪にひっかけてやぶっちまうと、おっかさんにつくろってもらったり自分でつくろったり、あるいは果敢に穴のあいたままの網で採集に挑戦したりして、あ、世の中てななんとかなっちまうものなんだな、なんて的はずれなことを学んだり、それはそれで結構なしろものでございました。
 さて、虫をとるにあたっちゃあ人それぞれにさまざまな目的がありまして、たとえば、あたしの場合は飼育したり標本にしたりするために虫をとるというありきたりな目的だったんですが、なかには食べちゃうために虫をとる人もいて、ロケンロールだなあ(?)と思う次第です。
 しかし、昆虫食はアングロサクソン以外のほとんどの民族にとってあたりきな伝統的食習慣で、栄養価が高く養殖も容易、自分でとって食うジビエ的な楽しみ方をするにも狩猟免許は不要といいことずくめなんですが、そんでもいやな人はいやだろうし、食いたくない人は食わなきゃいいし、キモいと思うのもご自由にてなもんで、ただバカにされる筋合いはねえよな、と。まして迷惑はかけちゃいねえんだから、とやこういわれたかあない。
 毎日出版文化賞受賞の『昆虫食文化事典』て本もおすすめですが、ただいまジュンク堂池袋本店七階では「昆虫菓子を食べる女子会&むし食がわかる展」が一月三一日まで開催されてて、虫くいねえさんたちの写真なんかが展示されてます。
 おいしそうだったよ。
 はい、昆虫菓子がおいしそうなのか、おねえさんたちがおいしそうなのかは、見た人それぞれの感想でございましょうね。

1 件のコメント:

  1. 【現代語訳】
    人に軽く見られるもの。穴のあいた捕虫網。虫を捕まえてその虫を食べちゃう人。

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