しばしお待ちを...

2013年1月30日水曜日

蟲雙紙 020 「にくきもの…」/ 風花銀次

 蟲雙紙〈二十〉       風花銀次

にくきもの いそぐ事あるをりにきてとびまはるてふてふ。あなづりやすきてふならば、「今度」とてもやりつべけれど、さすがにうらめづらしきてふ、いとにくくむつかし。長押につととまりたる。また、とびたちて、ゆくかとおもへばおなじところにもどりたる。

2013年1月28日月曜日

小説「曼荼羅風」4 -二十四孝- / 齋藤幹夫

2013年1月27日日曜日

小説「身代わり狂騒曲」 03 ‐ 修業の始まり / 風花千里

2013年1月26日土曜日

俳句十句「事後硬直」/ 風花銀次

事後硬直          風花銀次

祝子はふり川に毛のない金魚を放ちけり
嘘つぱちの艷懺悔しに萩寺へ
思惟像の胎内すでに煮凝れり
婦負郡婦中町速星冴え返る
薄明かりして人間の縫ひ目かな
月夜野驛見覺えがある知らぬひと
しぐるゝや身に覺えある比丘尼橋
つちふまずあるとおもへばある春だ
猫となる瞬間の戀猫である
夏も花に硬直一代男かな
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2013年1月23日水曜日

蟲雙紙 019 「人にあなづらるるもの…」/ 風花銀次

 蟲雙紙〈十九〉       風花銀次

人にあなづらるるもの 捕蟲網のほつれ。蟲とりてその蟲をくふ人。

2013年1月21日月曜日

俳句十句「風まかせ」/ 風花千里

風まかせ          風花千里

白南風や水牛のごと走りたし
マテ茶持つ指は微熱を帯びにけり
みつ豆や葉陰に虫の影ふたつ
短夜に鳥の耳目を集めけり
逝く夏に乗じて恋をかすめとる
卵溶く音の軽さや天の川
硝子戸は彼岸の花より赤々し
更待やじくじく疼く熱の花
茸狩や何やら首がむず痒い
まどろみのあはひに匂ふ酸橘かな
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2013年1月18日金曜日

短歌&随想「狼潤星」/ 齋藤幹夫

狼潤星 -やほよろづの星々- 齋藤幹夫

風花のふいに終はりて天空に冴えわたる天狼星シリウスの遠吠え

 シリウスは大犬座のその口元で咆哮のやうな輝きを魅せる。オリオン座のペテルギウス、小犬座のプロキオンとともに冬の大三角形を形成し、地上から見る恆星の中では二番目に明るい。名はギリシア語で「燒き焦がすもの」の意のセイリオスに由來するとされるが、私はあの靑い輝きに、天狼星の名からか、潤みを帶びた悲しげな狼の遠

2013年1月16日水曜日

蟲雙紙 018 「蟲の國より…」/ 風花銀次

 蟲雙紙〈十八〉       風花銀次

蟲の國よりおこせたる文に文字なし。文字なくてなんの文かと思ふらめども、されどそれはゆかしき情などつづられ、子は亡き親を偲べばよし。さて子のためにわざと淸げに卷きたる文を、いとかたく卷かむに、目をかすめ盜むものありて、やがて親にもにぬぬすびとの子のよろこびぞめきたる、いとわびしくすさまじ。

2013年1月13日日曜日

詞句窯變 ― trans haiku 002 "León de Plata" / 風花銀次譯

trans haiku "León de Plata"
On strange occasions I translated haikus that Leonhard of the Argentine novelist produced.
I worried whether I could translate it. However, I tried it because his haikus are attractive. Well, rather may be honkadori as ever, but... I had a good time!
I named "León de Plata" from a part of our name. Incidentally, Gin(銀) is meaning silver(plata).
Ginji Kazahana

 詞句窯變「銀獅子」       風花銀次
縁あつてアルゼンチンの小説家レオンハルト氏から、彼の俳句の日本語譯を賴まれた。あたしでいいんかいな、と思ひつつ、拜見した句がなにやら好ましかつたので、身の程知らずにも引き受けた次第。まあ、飜譯つたつて相變はらず本歌取り的なあれだけどね。そんで銀次の銀とレオンハルトのレオで「銀獅子」なんて洒落てみた。

2013年1月11日金曜日

ひとり兎園會 3 「河童」/ 齋藤幹夫

 ひとり兎園會 ―其之參 河童―      齋藤幹夫


          ○河童かっぱ  川太郎ともいふ(『畫圖百鬼夜行 陰』より  鳥山石燕)

2013年1月9日水曜日

蟲雙紙 017 「すさまじきもの…」/ 風花銀次

 蟲雙紙〈十七〉       風花銀次

すさまじきもの、夜鳴く蟬。冬の蚊。三四月の黒き紅小べにし粉蜱こなだにたかりたる標本。羽化せぬ蛹、繭。やどりばちのうちつづき出できたる。蟲とらぬ蟲屋。撮影にゆきたるにバッテリー切れのカメラ。まいてめづらしき蟲あればいとすさまじ。

2013年1月4日金曜日

小説「身代わり狂騒曲」 02 ‐ 葬式 / 風花千里

2013年1月3日木曜日

短歌&随想「鬼笑星」/ 齋藤幹夫

鬼笑星 -やほよろづの星々- 齋藤幹夫

吉凶のいづれを暗に示さむや元日の星々のどよめき

 星を觀るのに月光は邪魔者扱ひをされると聞く。  二〇一三年一月一日は更待月であり、かなり明るい。冬の澄んだ大氣の中の星は他の季節より輝きを增すと言はれるが、大晦日から元日は大氣を汚す基となるものの動きがかなり納まるからか、尚更に星の輝きが、その月光の下でも增すやうに感じられる。更待月が正中に達する頃の午前二時過ぎ、大熊

2013年1月2日水曜日

蟲雙紙 016 「おひさきなく…」/ 風花銀次

 蟲雙紙〈十六〉       風花銀次

おひさきなく、まめやかに、せまき世間のみ見てゐたらん人は、いぶせくあなづらはしく思ひやられて、なほさりぬべからん人のむすめなどは、蟲をとらせ、世のありさまを俯瞰させならはさまほしう、蟲屋などにてしばしもあらせばや、とこそおぼゆれ。
蟲とりする人をば、ばかばかしうわろきことにいひおもひたる男こそ、いとにくけれ。げにそもまたさることぞかし。いとうつくしき鱗翅目をはじめつかまへ、鞘翅目、半翅目、膜翅目、雙翅目、蜻蛉せいれい目はさらにもいはず、なれど知らざる蟲は多くこそあらめ。身近き蟲ども、山ふかくすむ蟲ども、

2013年1月1日火曜日

詞句窯變 ― trans haiku 001 / 風花銀次譯


Konoha tiru hodo no oto mote tutae keri

木の葉散るほどの音もて傳へけり