〈大江戸鉄火双紙 一〉丁か半かの命なりけり 風花千里
時は、田沼政治の真っ只中。松平丹波守 下屋敷の中間 部屋で、博打に興じていた伝助という男。土間に敷かれた茣 蓙 の上に、いきなり突っ伏した。 壺振りを囲んで丁半を張っていた博徒たちが、一斉に狼狽 える。伝助の口から、寒椿の花びらのように血が鮮やかに散った。 「ちっ、労咳 病みかい? 仕方ねえな、こんなところで倒れられちゃ、迷惑千万だ。さっき来たばかりだから、まだ銭を持ってんだろう。おい、金次、佐七、こやつを医者へ運んどけ」 中間頭で胴元の勘兵衛が、近くにいた小者たちを振り返った。 金次、佐七と名指しされた二人は、あからさまに嫌な顔をした。 二人は大の博打好き。共に今日は馬鹿にツイ
2017年5月21日日曜日
2017年5月1日月曜日
短歌十首「駄天使」/ 風花銀次
駄天使 風花銀次 果物籠をかかへて永 久 に童形の駄天使カラヴァッジオがたたずむ 夜ふけ貴腐葡萄一房かこみゐて病めるバッカスめける若きら 天上的愛に想ひをいたし「お稚兒さん 」てふ名の巨犬曳きゆく 沙汰のかぎり女占ひ師とわれが羅 睺 を視てしまつたことなど 戀にも革命にも醒めてきみが彈くリュートよりほとばしるかなしみ 洗禮者聖ヨハネ像にゑがかれて歸る女衒にふる春の雨 われをやさしく殺ししのちはゑまふほかなくてほほゑむ男娼ダヴィデ
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