2013年8月31日土曜日
2013年8月19日月曜日
小説「身代わり狂騒曲」 09 ‐ 夢 / 風花千里
身代わり狂騒曲 風花千里
第九章 夢 一 雨が絶え間なく降っている。 梅雨時の雨はただでさえ鬱陶しいが、ここ数日は、やけに蒸す。足元からふやけるような心地がして、佐助は苛々を募らせていた。 苛つくのは、気候のせいばかりではなかった。 櫺子の戸を叩く音がした。 ──また、苛つきの種が来た。 返事をするのも億劫だった。 遠雷のように嫌な予感をもたらす音がした。男が櫺子を開けたらしい。 「源内先生、お留守ですか、源内先生!」 忙しない男の声が響き、内側の戸を、がたがた揺する気配がする。 ──何ぞ、急用か。
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