戲遊軍嬉遊曲 齋藤幹夫 梅擬一枝手折りてすゑの世にいでたる花の景季もどき 料理敎室混じる二、三のますらをに薔薇ばらばらに殺 されあはれ 梅雨の世につゆほどおもふことなけれども雨男佐佐木信綱 屁理屈の腥 き惡友を毆 つ黑 南 風 握り潰せし拳 愛でも啖 ひやがれ!文月 の水槽に幾色か缺く虹 霓 魚 愛人の肌 にふれず牀の閒にかざりし合 歡 を愛 でむとしよう われ迷ひ込みたるゆゑに新宿區百人町に吹くむかひかぜ 煉獄に秋風吹きてふとぶとと黃金 向日葵 直立に死す 葉月盡 あまたありける死のかたちボードレールは母の胸にて朱欒 の飛沫 眼 刺したり「すべて惡を行ふ者は光をにくみ」 官能をくすぐられつつ衣 被 衣 脱 がしめていざきぬぎぬを 神童にほど遠かれどかれにさへ纖月ほどのこころざしあり 竈馬奔り『駈け込み訴えに』ぶち當たりこの罰當たり奴が 本銀鑄物純金細引の引手「若月 」誰持ちゐしか しろがねの秋風に肩斬られゐて步める出雲組のちんぴら 初戀の人の名忘れ柞葉 の祖母傾國定公園
石榴爛熟のちひからびて「魔王、わが 長き悲慘を憐み給へ」 くれなゐの色のはなやぎ葬送の列に侘助椿つらなり 無月無言に步みつづける逢引の途中どこかに火事はあらぬか 後朝のまだ暗闇にもうすこし寢かせてくれよ喇叭水仙 血だまりのごとき薄氷 くれなゐの朝燒けのけふ實朝忌なり 啓蟄に鍵掛け忘れ興ずるは腦 介 機 裝 置 後京極攝政太上大臣忌 天幕に星ひとつ失せたり 底冷えの今朝またわれは生きのびて蜆朱椀に沈みて死ねり 禁斷の戀などあるか歸る雁はばたきふたりあわてふためき 春泥の泥の枷ぬけられぬ蝶 戲を見てせざるは遊無きなり 茶室掛障子 椿の影うつすのみのもてなし嘉 す夕暮 天空に溺る雲雀の斷末魔聽かむにヴィヴァルディ「春」が邪魔飛燕草 蒼 穹 に翔びたつ決定的瞬閒を見逃してしまつた たましひのいきつくさきを見にゆかむそのまへに「篝火」を二、三杯
2012年9月15日土曜日
短歌三十首「戲遊軍嬉遊曲」/ 齋藤幹夫
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