2018年4月30日月曜日
2018年4月28日土曜日
小説「蝶々雲――かむろ菊乃の廓文章」02 / 風花千里
蝶々雲――かむろ菊乃の廓文章 風花千里
第二章 ゆきに千鳥 「はい、お疲れさん」 綾錦がねぎらいの言葉を口にする。 丁子屋の居室に着いた綾錦の一行は、皆、一様にほっとした表情を浮かべていた。 他店の花魁と己が店の花魁との競演という、ただでさえ緊張を強いられる舞台。そこで主役の一人が倒れるというあの騒動。枡屋の座敷で、綾錦は朋輩を気遣い、芙蓉につきっきりだった。 それゆえ、綾錦についてきた振袖新造の初糸や、番頭新造の八橋の気の揉みようは、ひと通りではなかった。丁子屋に帰り着いた途端、どっと気が緩んだのは仕方のない話でもある。 二人の新造に比べると、菊乃はいたって元気だった。
2018年4月21日土曜日
2018年4月15日日曜日
小説「蝶々雲――かむろ菊乃の廓文章」01 / 風花千里
蝶々雲――かむろ菊乃の廓文章 風花千里
第一章 顔合わせ 初冬の空高く、蝶々雲が乱れ飛んでいる。 蝶々雲は強風の兆しというように、今日は風が強い。 妓楼、丁子屋の二階に干された手拭いや緋色の湯文字は、竿から逃れようとあちらこちらへ翻っていた。 しかし、洗濯物はきっちりと竿に留められている。逃散の望みがかなう見込みは、どう考えても薄かった。 菊乃は物干し場の隅に座り込み、ぼんやりと空を眺めていた。 この場所はいつも人気 がない。朝夕に洗濯物を抱えた下働きが出入りするくらいだ。時は昼の九つ半。花魁の朝飯の世話やお
2018年4月10日火曜日
短歌五首「拙歌戰士」/ 風花銀次
拙歌戰士 風花銀次 かつて赤提燈ありき甁子押し立てて砦となせし あはれ 赤心より申す「王樣ははだかだがあかはだかぢやないぢやないか」 ねぢる手の赤子がたらぬ、國難といはずんばずびずば(やめてけれ) あかほしの赤狩りなどとお戲れめさるな鷹匠が困つてござる 赤狩りの苛烈を極めそこここに嗚呼あかねさす赤い信女
2018年4月8日日曜日
独吟半歌仙「蝶々雲の巻」/ 風花千里
独吟半歌仙「蝶々雲の巻」 風花千里時代小説の中で使う予定で作った架空の半歌仙ですが、結局使用しませんでした。でも、その小説の予告っぽい感じにはなってるかも……。 ハレの日に入り乱るるや蝶々雲 書物問屋が虎落笛聞く 寄り添ひて童べのかく軽いびき 菓子箱の蓋開きっぱなし 早春の洲崎の砂を照らす月 いと掌に温しお江戸の水は
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