蟲雙紙〈二十一〉 風花銀次 こころときめきするもの天牛 の材採集。かつて成蟲のとまりたるよき枝をたづねて、ひとりゆきたる。立ち枯れに日のあたりたる。落ち葉の、あつくつもりて、しめり、にほひたちたる。 材を割り、食痕をたどり、ゆかしう籠りたる幼蟲を見たる。羽化脱出後の材にても、朽木 蟋蟀 などゐて、いとをかし。橡 のしたをゆくとき、あしもとに、鐵砲蟲茸 のそびゆるも、ふとおどろかる。天牛の採集法には、材採集のほかにもルッキングやスイーピング、ビーティング、吹き上げ採集、灯火採集などがあり、いずれも楽しく、また天牛以外の虫の採集でも、もちろん心はときめいちゃうんですが、この材採集てものは、幼虫や蛹が入った枝をそのまま拾ってきちゃうおおざっぱといえばおおざっぱな採集法で、どんな成虫が出てくるかしらんと長きにわたって楽しめるところがみそ。 練達の士ともなると、材採集で、狙った種がかなりの高確率で捕れちゃうそうです。生息地や寄主植物(樹種)などでも見当がつけられるとはいえ、割り出したとしても幼虫を同定するのは、ちとどころでなくむずかしく、こんなのは特殊能力としかいいようがないね。 天牛の幼虫は別名鉄砲虫で、現代でこそ珍味の高級食材として有名ですが、薪炭が主な燃料として使われていた時代にはありふれた食べ物で、子供のおやつだったりしたようです。ファーブルおじさんの例のご本によると古代ローマの美食家たちも食べてたらしいよ。その鉄砲虫に寄生するのが鉄砲虫茸で、いわゆる冬虫夏草の仲間てことになります。 そんで、冬虫夏草は世界では現在四五〇種ほどあり、そのうち三五〇種が日本での発見だそうで、まだまだ発見されそうです。 なんだか日本は冬虫夏草天国みたいですが、まだ研究途上なので実際にはもっと少ないかもしんないし、多いかもしんない。また種類によりさまざまな薬効があるらしく、その方面の研究もぼぼちぼち進められてるようです。 ばかに効くのがあるとありがたいけどね。
2013年2月6日水曜日
蟲雙紙 021 「こころときめきするもの…」/ 風花銀次
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