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2014年10月12日日曜日

短歌十首「點靑の書」/ 齋藤幹夫

點靑の書         齋藤幹夫

色欲の色褪せつつを中空なかぞら秋茜あきあふとひきかへしたり
火事喧嘩稻荷に犬の糞そして新蕎麥手繰る伊勢屋のあにい
七竈、茱萸、まゆみの實、紅葉もみじ、ああ夢に血紅を嗅ぐ白秋忌
紅葉こうえふの蔭に老婆の向か齒幾枚か缼け哄笑がすさまじ
おきぬけの モーゼ、約三千五百年前に埃及を出ず
ブリューゲル狂ひの叔父の遺品『癡愚神禮贊』の栞の楓葉かへで
咳しても無視 愛人と圍みゐし柚子鍋に牡蠣ひくひくとして
くれたけの不審火續く三鷹市下連雀狐久保界隈
生恥、それよりも西日にればむを嫌ひてあはれ枯れし蟷螂
嵌殺窻はめころし、そこより覗く昴 わが死の隊列の 殿 しんがりに就け!
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