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2012年10月27日土曜日

俳句三十句「金谷酒數」/ 風花銀次

金谷酒數          風花銀次

この神酒はわが神酒ならめけふの月
泣き上戸泣きだすまでが月見哉
さかつきが妻よりいづる雨月かな
つゆほどのむかしかたぎや菊の酒
物理とはもののことはりぬくめ酒
彼岸卽此岸殘んの酒いづこ
おしいたゞく駄句をすなはち賢酒とぞ
藝術の術のほかなる琴酒かな
しぐるゝやまたくりかへすまはしのみ
燗性のちがひを云ひて別れけり
去年の酒今年の酒とつらぬけり
屠蘇さつさつと急所をついてながれけり
わらひ下戸てふもありけり四方の春
むかしびて奇特あり南無般若湯

花の木にまづ通ひけり酒の色
晝酒の恩賣りにくる櫻かな
初蝶やいふまでもなき肴舞
春の夜の大粘膜やにごり酒
人外の上戸となりぬ花の奧
肝膽のくらきところゆ花の冷え
どこかちぐはぐな絶對葷酒よな
容姿端麗辛口が佳き武者繪かな
あやめ酒今もをとこに腰のもの
梅雨寒や燗場の勞を讃へけり
なつそばもよしとしてさかづきんめり
女だてらを問はず語らず冷やし酒
愁ありて新走り驅け拔けしのみ
燈ともして酒とくながふ居待かな
盃見てののちはみじかき夜長かな
秋寒し酒を聞くとはこの耳か
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