蟲雙紙〈十三〉 風花銀次 山は、浅間山。妙高山。雨飾山。白馬岳。雪倉岳。てふてふ舞はんとをかしけれ。祖母山。茂見山。大崩山、よそより見るぞをかしき。国見岳もをかし。ちちははのそだててくれし恩おもひ出でらるるなるべし。時雨岳。小川岳。はい、「てふてふ舞はんと」までの前半は、いわゆる高山蝶の産地です。 高山蝶といっても明確な定義はなく、おおざっぱにいえば字面のイメージ通りてな感じですが、とはいえ高山に見られる蝶のすべてが高山蝶ではないなんてなことをいわれると、なにがなんだか、となる人がいても不思議じゃないね。 高山蝶には 雲間 褄 黄 蝶 、深山白蝶 、深山紋黄蝶 、雲間 紅日 陰 蝶 、高嶺 日 陰 蝶 などがいて、多くの種が環境省のレッドデータブックに記載されてます。これを密猟する不届き者がいるので、正義の味方を気取ったばかがオフロードバイクでパトロールして貴重な生息地を荒らすという笑い話にもならない状況も仄聞いたします。 で、祖母山以降は角黒艶虫 の産地。あたしの生まれ育った九州の山ばかり挙げてますが、四国にも産する。 角黒艶虫てのは鞘翅目の一種で、朽木のなかに集団で棲息し、成虫が幼虫の世話をする亜社会性昆虫として知られてますが、くわしい生態は、まだわかんないことのほうが多いようです。 成虫が口から木くずを吐き出して幼虫に与える給餌行動を動画で見たことがありますが、あたしゃ虫をはじめ生き物を擬人化するなあ基本的に好きじゃないけれど、そんでもいじらしく、ある種のホモ・サピエンスよかよっぽど上等だぜ、と思った次第でした。 蛹室をつくるのも、経験豊富な大人として手伝ってあげたりするそうです。 亜社会性の昆虫には、多くの人が意外に思うような虫がほかにもいたりするんですが、それについちゃあまたの機会とすることにいたしましょう。
2012年12月12日水曜日
蟲雙紙 013 「山は…」/ 風花銀次
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【現代語訳】
返信削除山は、浅間山、妙高山、雨飾山、白馬岳、雪倉岳なんかがいいわ。高山蝶が飛んでてすてき。祖母山や茂見山、大崩山を遠くから見るのがいいの。国見岳もいいわね。育ててくれた両親のことがありがたく思い出されるの。時雨岳、小川岳……。