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2012年11月23日金曜日

俳句三十句「從容優樂」/ 風花銀次

從容優樂         風花銀次

日のもとの龜鳴く國に生まれけり
夢の世へをのこ女體より出で來し
初音ふとやみたるときが美聲かな
梅が香やそれよりも子の眉ほのか
産土うぶすなにほの〳〵白しこぼれ梅
春風や産立飯うぶたてめしに焦げすこし
念者とも父ともおもへ梅の空
春宵の嬰兒正調にて泣けり
花をいひ風をいひけり宮參り
ゆふされば夕櫻なるにぎみたま
花の木のくはしき管や水の音
優しにつぽんだんじなる假名初幟
腰のもののびてちゞんで五月かな
をのこ汝れ命をしめ葛ざくら

母となりてけふ鐵壁の浴衣かな
梅雨の家食ひ初め椀に鶴と龜
小さかる窓こそよけれ夏の月
よう來たというて戸を開く今朝の秋
齋兒いつきごを形見に蚊帳のわかれかな
秋風のちゑぼとりして白齒かな
秋濤の喃語に喃語をかへしけり
句ににほふ妻子とありぬ草月夜
鐵塔に神經見ゆる寒さかな
冬ふかし不隨意な筋肉がある
鶴步みきて多生の緣を云ひにけり
これしきとばかりに太る木の芽かな
春蔭の子に卵生を騙りけり
逆夢を見て忘れけり春の暮
春の行方を百人町で見うしなふ
遲日ちゝとなりなりてなりたらざりき
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