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2012年8月4日土曜日

俳句三十句「烏兎匆匆」/ 風花銀次

烏兎匆匆          風花銀次

國ぶりの態位をたゞす神樂かな
去年今年流るればこそ志染川
そのさきに鳳穴あらむ揚げ雲雀
貌鳥のおのれがほなる尖りかな
蟲穴を出でざるもあり地鎭祭とこしづめ
荒壁やそこかしこなる地 祇くにつかみ
音立てて水飮む蝶や無人驛
かげろふにわれはが立つをとこかな
淺蜊ごときが舌を出しけり日向灘
天人の捨て盃か花に月
戀猫に猫ならざるはなかりけり
つちふるをうつゝの夢に告げられき
きぬ〴〵の春鹿に眉なかりけり
一蝶去つて高千穗峽のふかみどり
つのぜみは動く伽藍といふべかり
かなぶんのぶんともいはぬ暑さかな
寄風邪戀かぜによするこひの句もあれ晝寢覺め
痩せにけり蚊絣の蚊をたしめて
夏足袋や行きあたりたる勘どころ
裸體から裸體へと羽化いたしけり
白玉や十指にあまる似而非通語
木にりて陸寄居虫 ご う な鳴くなり月凉し
夜の虹うごくとみれば馬陸やすでかな
捨てられて化天を展く扇かな
香細かくはしやいはゞ韋駄天走り蕎麦
歳月やまはるお壽司の皿の色
秋ふかしおもへば耳をもてりけり
蜜月や颱風の目に目を合はす
陸封の人と雨月をかこちけり
この世からひやかしにゆく月夜かな
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