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2012年8月19日日曜日

短歌二十首「穀潰手控帳」/ 齋藤幹夫

穀潰手控帳          齋藤幹夫

良經の扇にすまふ秋風に見事帽子シャッポをぬがしめられて
弟に戀の樂しみ教えなむ この兄が戀敵とならう
戰火勃ちあがるべくしてたちあがりすさまじ曼珠沙華の一群
夜に爪切つて逢へざるものに胸ふくらませおり 蒼き若月みかづき
ひねもすや梨のつぶつぶ數へをるこの暇潰し われ穀潰し
あしひきの病ひありけり眞夜中を路面清掃車がはひまわり
たぶん殺しはしないとおもふから吾妹子よ寢てゐるときも薄目な開けそ
凍蝶がわれをみつめてゐし氣配 いけしやあしやあと生きてみせう
家計火の車の家庭全燒し火災保險金轉がりこんだ
雪の明るき夜にしたたか醉ひてわれ取り圍まれり 詩人ども奴に
談笑を男娼と聞き違へたり 雪落ちて枝はねあげる杉
生残りかつあまた死にけるうつしよにまた帝都瓦斯値上案内
螢光燈かそけき音をたてており ちちははといふ厄介なもの
梅が香に、否否梅のくれなゐに映えて齋藤茂吉ぶをとこ
連衆の女ひとつに男五匹 擧句の果てに花散りにけり
干支は麒麟の五月生まれのもののふの行方どなたか御存知無い?
青嵐青山通り駈けぬけてあれあかぬけぬ寺山修司
驟 雨はしりあめ雨足に踏みつけられてぼろぼろの蝙蝠扇かはほりの屍
空の空なる空腹にして西空の虹色のさうめんが食ひたい
御控へなすつて。手前生國發しますところ九州、日向日之影
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