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2018年2月20日火曜日

独吟歌仙「空蟬の巻」/ 風花銀次


独吟歌仙「空蟬の巻」
            風花銀次

 
四半世紀前の独吟歌仙が反古のなかから出てきた。初学の頃ゆゑ下手なのはいたしかたないが、いまだにちいとも上達してないのが問題だなあ。
 
 
 
空蟬や日に世をついで狂句生れ
 
 脳しびるゝばかりおそなつ
 
船倉にマドロスしばしまどろみて
 
 木曜島に驟雨過ぎにき
 
何を研ぎ澄ますべく照るけふの月
 
 酒気帯びし身で秋韻を聴く
山守も燈火親しむ頃ならむ
 
 竹伐つて蒼ざむるつかの間
 
たぎつ瀬にひと戀ふ駱駝たちすくみ
 
 愛染明王まつる浮かれ女
 
小夜衣ひるがへるこそかなしけれ
 
 音声消してテレビ見てをり
 
夢醒めて嗚呼さはがしき牡丹雪
 
 月光凍てゝ野づらに刺さる
 
中空に飛行機機首を北へ向け
 
 旅人きみのおもかげもはや
 
やせ犬が蹌踉とゆく花の下
 
 春夜酔余の輓歌さびたり
こりずまにむすび細魚をほどく阿呆
 
 付文に誤字多きうらゝ日
 
恋猫がいきとはこれは異なことを
 
 愛語散らすこの風はなにかぜ
 
お茶ツぴいな早乙女の指よくうごく
 
 苺市へとゆるりまゐらう
 
のしつけてかへすがへすもくちをしき
 
 贋神主がみせぬ正体
 
暮れのこる厨に火腿を斬り捨てゝ
 
 アキ キニケリ と告げる電報
 
大いなる大崩山に月架かり
 
 狭霧のなかに風のいろ〳〵
すれ違ふ人それ〴〵の髭自慢
 
 ジル・ド・レ公の行先知れず
 
大伽藍彼方此方にさかしまに
 
 黙ふかくして霞たなびく
 
落花しきり四光五光もあやにくに
 
 雅俗なにするものぞ朧夜

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