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2018年2月5日月曜日

短歌十首「アイスキューブ」/ 風花千里

アイスキューブ      風花千里

かざぐるまかざして歩く臨月のゆくてに待てる螺旋階段
父となるひとが請ふ膝枕には三つの息遣ひが重なる
十月十日ふくろに揺られゆうらゆらしてゐたきみを起こすあはゆき
わたくしがほころび始む予定日のアイスキューヴに観念凍る
雪しまく朝産院へ さしあたり期待と不安を肺葉に詰め
あめつちの鼓動と一つになるわれをしづかに迎ふ分娩室は
呼気吸気まざりあひたる産室に輸液の細きチューブ蠢く
陣痛のいたみのあはひに浮くわれを赤、白、黄の睡魔が招く
分娩のさなか産道の入口ではららごとすれ違ふ心地す
三〇九〇グラムの体躯に鮮血のマントまとひてきたるゆふぐれ

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