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2017年9月15日金曜日

短歌十首「菊ちやん」/ 風花銀次

菊ちやん         風花銀次

菊之助と名づけ愛しし陸龜を遺して妻ははや逝きしかも
名を呼べば驅け寄る龜のつぶらなる黑き瞳に妻がしのはゆ
菊ちやんと日にいくたびも聲をかけ龜が鳴くてふ春ぞかなしき
小松菜一把たうべてもなほ足らぬげにわが顏を見る龜に聲なし
菊ちやんのために草摘み妻のため花摘む野邊に降りけり
部屋ぬちに放てば我のあとに付き從ふ龜の菊之助し
晝下がり龜が水飮む音にさへ驚く靜かなる部屋なりき
秋の夜長を讀書するわが足下に寄り添ひて菊ちやんは眠れり
手足投げ出して眠れる陸龜は故鄕の地中海を夢見る
妻ははやなくて万年生きるとふ龜と過ごせる餘生なりけり

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