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2017年6月1日木曜日

短歌十五首「エクリプス館」/ 風花銀次

エクリプス館       風花銀次

「飛行機はひたぶるに地を戀へり」とぞはつなつ誤配の葉書が屆く
われのかたはらに見知らぬ戀人がまふ〈エクリプス館〉棧敷にて
火星マルス金星ウェヌスとせごとのきぬぎぬのかなしみかさぬ 永久とはにかさねよ
あまいあまいカフェ・ド・ボルジア飮みほして今夜は死んだやうに眠らう
不 忍 戀しのばざるこひとよ意氣のきはみにて淡淡あはあはとたまかぎる遊冶郞
彼女の部屋に三日ゐつづけいまさらに鈍色の痩身器おそろし
醒めつつ愛を語らふわれのまなかひにゆりかうゆられ百合鴎飛ぶ
食卓に非致死量の薔薇のジャムまたなまぬるき今日がはじまる
たれを他界へ誘はむずらむ愛語もて敷きたる奇門遁甲の陣
この戀のゆくへやいかに音を消して見てゐるテレヴィジョンに
今伊右衞門てふ仇名たまはりて「天網なんざあ逃れてみせう」
嘘なひとはいやよ、いやよと天球儀の上なる後向きの處女をとめ
公家惡といふもおろかに若造が觸角のごと髭うごめかし
赤帝の半身に蝕すすみゐむふいに口唇性欲兆す
終 幕エピロ-グ――戀人たちが鱗なきものをむさぼりゐて、暗轉

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