エクリプス館 風花銀次 「飛行機はひたぶるに地を戀へり」とぞはつなつ誤配の葉書が屆く われのかたはらに見知らぬ戀人が咲 まふ〈エクリプス館〉棧敷にて火星 と金星 、二 十 年 ごとのきぬぎぬのかなしみかさぬ永久 にかさねよ あまいあまいカフェ・ド・ボルジア飮みほして今夜は死んだやうに眠らう不 忍 戀 とよ意氣のきはみにて淡淡 とたまかぎる遊冶郞 彼女の部屋に三日ゐつづけいまさらに鈍色の痩身器おそろし 醒めつつ愛を語らふわれのまなかひにゆりかうゆられ百合鴎飛ぶ 食卓に非致死量の薔薇のジャムまたなまぬるき今日がはじまる たれを他界へ誘はむずらむ愛語もて敷きたる奇門遁甲の陣 この戀のゆくへやいかに音を消して見てゐるテレヴィジョンに二 重 輪 郭 今伊右衞門てふ仇名たまはりて「天網なんざあ逃れてみせう」 嘘なひとはいやよ、いやよと天球儀の上なる後向きの眞 處女 公家惡といふもおろかに若造が觸角のごと髭うごめかし 赤帝の半身に蝕すすみゐむふいに口唇性欲兆す終 幕 ――戀人たちが鱗なきものをむさぼりゐて、暗轉
2017年6月1日木曜日
短歌十五首「エクリプス館」/ 風花銀次
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