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2018年5月20日日曜日

短歌十五首「すずしろ」/ 風花千里

すずしろ         風花千里

哺乳瓶おもちやにしてゐる子を眺めつつくろぐろと太き眉ひく
祭太鼓に驚いて泣くきみとみいみいぜみがつむぐ輪唱
みづおちに酸ゆきが渦巻きゐたる日は昼月しろきうすものまとふ
亡き母の帯締めてみる夕刊に児童虐待の記事踊る日
生えかけの乳歯一本愛でながらうすき蓮根酢水にさらす
けふの気分はまだらなブルーそれならば夕餉の皿にトマトを少し
おもちや箱に月の光が寄り添ひし日より輪投げの輪が見当たらぬ
齢三十七年重ねてきたる眼にいたくまぶしきすずしろの白
四肢にまだくびれの多き子を抱いてゆふぐれいろの桃の実つかむ
一瞬もじつとしてないきみだから星の斑のあるおしりをはじく
食卓のへりを掴んで立ちあがる子のまなじりに浮かぶ血管
雛の日に一日足りず生まれ来しにつぽんだんじの初めの一歩
飛行機雲つかまへたくて手を伸ばすきみにはきみの持つ地図がある
いけのみづときをりひかりちらすのはきらりきのふのながれぼしだよ
きみが誕生の日を迎へるごとに金鈴ひとつ空へ贈らう

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