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2012年9月26日水曜日

蟲雙紙 002 「昆蟲は…」/ 風花銀次

 蟲雙紙〈二〉        風花銀次

昆蟲は、鱗翅目鞘翅目直翅目膜翅目半翅目など翅のありさまにてわくるがつねなるに蜻蛉せいれい目てふすずやかなる名ありてをかし。

 とんぼもく、なんてなあいやで、せいれいもく、と申します。
 はい、翅の前に一字加えて昆虫の特徴を美事に言い表すという結構なことをおこなっていたのも今は昔、旧文部省が乱発した愚民政策の一環として『学術用語集 動物学編』で、ばかな国民のために目以下の名称はすべてカナ書きにして、それぞれの動物群を代表する動物の名前にしちまおう、となったのが一九八八年、爾来鱗翅目はチョウ目、鞘翅目はコウチュウ目、直翅目はバッタ目、膜翅目はハチ目、半翅目はカメムシ目などと情緒のかけらもなく、かつナイーブな感性を逆なでするかのような目名になっちまいました。革翅目(ハサミムシ目)や撚翅目(ネジレバネ目)、隠翅目(ノミ目)、その他もご同様。
 今でも旧来の目名を漢字表記で使用する信条の持ち主はございますが、出版社なんざあ多くはお上の決めたことにさからわない。
 もともと翅の一字を含まない目名には、蜻蛉目のほかに竹節虫目(ナナフシ目)や蜉蝣目(カゲロウ目)などがありますが、視覚的および聴覚的の美しさにおいて蜻蛉目は他の追随を許さないね。

1 件のコメント:

  1. 【現代語訳】
    昆虫の目名は、鱗翅目・鞘翅目・直翅目・膜翅目・半翅目……といったように翅の形で分類するのが普通なんだけど、蜻蛉目なんてすずしげな名前もあってステキね。

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